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ビジネス小説 |
■ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か
機械メーカーの工場長である主人公のアレックス・ロゴを中心に繰り広げられる工場の業務改善プロセスを主題にした小説。
通常、アメリカでベストセラーとなったビジネス書は、すぐに日本語に翻訳されるものだが、本書は世界で250万部売れたにもかかわらず、17年もの間日本での出版だけが認められなかった。
いわば「幻の名著」である。
長引く経営の悪化、工場閉鎖までたった3か月の猶予期間、多忙な日々のなかないがしろにしてきた妻との離婚の危機…。
アレックスは、あまりの危機的状況にすっかり意気消沈していた。
その前に、モデルは著者と目される恩師、ジョナが現れ、彼にアドバイスを与える。
工場を救うために業務改善に挑む登場人物の苦悩や目標達成の興奮が伝わってきて、ビジネスの醍醐味を感じさせるストーリーだ。
本書は小説ではあるが、その内容は恐ろしいほど実践的で、会計情報の正しい見方や落とし穴、「効率化」の陰に隠された諸問題を浮き彫りにする。
魅力的なストーリーの中に複雑な業務改善のノウハウがわかりやすい形で盛り込まれており、ビジネスパーソンやマネジャー必読の内容である。
また本書は、問題解決にあたってはゴールを共有し、信念を貫くことが重要であること、数字の陰に隠された実態を見抜くことの重要性、情報共有化の意義など、経営において重要な示唆も与えてくれる。
本書が長い間日本で出版されなかった理由については、「解説」で著者エリヤフ・ゴールドラットのコメントが引用されている。
それによると、「日本人は、部分最適の改善にかけては世界で超一級だ。その日本人に『ザ・ゴール』に書いたような全体最適化の手法を教えてしまったら、貿易摩擦が再燃して世界経済が大混乱に陥る」というのが出版を拒否し続けた理由らしい。
本気か冗談か知らないが、いずれにしろ、アメリカが出し惜しみするほどの名著を日本語でも読めるというのは非常に喜ばしいことである。
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■『ザ・ゴール』の続編 ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス。
前作で紹介したTOC(制約条件の理論)を単なる生産管理の手法から、マーケティングや経営全般の問題解決にも適用できる思考法へと発展させている。
前作と同じように小説形式で、読みやすさは健在だ。
前作では工場閉鎖の危機を救った主人公が、今回は副社長としてグループ会社の経営再建に立ち向かう様子が描かれている。
この本を読めば、「変化を起こし、実行に移すための手法」を自分で体験したかのように理解できるというのがウリ。
現在、日本では政治や企業活動を問わず、改革を唱えるだけで現実は何も変わっていない場合が多い。
精神論ではない具体的な手法こそ、改革を推進する人々に広く役立つはずだ。
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■iモード事件
空前のヒット商品iモード誕生までの実話。
筆者は1997年にリクルートからスカウトされて、NTTドコモ・ゲートウェイビジネス部企画部長としてiモードのコンテンツ開発を担当してきた松永真理さん。
彼女は、その功績からドコモ社内の技術部門の社長賞である「R&D賞」を受賞し、日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2000にも選ばれている。本書は,彼女でなければ書けなかった,iモードが生まれるまでの様々な出来事をまとめたものである。
物語は、1997年3月、「とらばーゆ」の編集長であった彼女に「とらばーゆ」の話が持ち込まれるところから始まり、2000年3月に赤いバラの花束を手にNTTドコモを退社するところで終わる。
登場人物はみんな個性的で,生き生きと描かれている。
頭の固いドコモ本社からチームを守るリーダーの榎、英語の単語を並べて議論をリードしていく経営コンサルタント軍団を率いる横浜、NECからやってきた「おじさん」の川端、演歌の好きな御曹司の笹川、彼女がベンチャー企業から引き抜いてきた夏野など、みんな魅力的に描かれている。
もちろん,最後は,iモードの大成功というハッピーエンドであることは分かっているのだが,読み始めれば途中で止められない。
次々と事件が起き,難問が持ち上がり,iモードサービスを担当するゲートウェイビジネス部やiモードプロジェクト自体の行方が心配になってしまう。
そして,おそらく読み終えた時,いつの間にか自分も彼女たちと一緒になってiモードを立ち上げたような錯覚におちいってしまう。
そんな本である。
こういう本を読んでしまうと、何か、自分でもやってやろう!と思う単純な僕。
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■悪魔の辞典(ビジネス版)
アンブローズ・ビアスの『悪魔の辞典』のようなテイストで、ビジネス用語を再定義したユーモラスな1冊。大企業病をテーマにした内容を中心に、批判精神あふれるユニークな内容が展開されている。
【上司】
1.自分の提案を、横取りするか邪魔をする人
2.酒のつまみとして、一番多くオーダーされるもの
【人事考課】
1.先に順序をつけてから、各人に評点を書き込む作業
2.好き嫌いや印象を定量化する作業
【源泉徴収】
サラリーマンに納税額を意識させないために発案された国の政策
【MBA派遣】
1.他者のために、教育投資をする社会貢献
2.転職していく社員に企業がつける“のし”
3.理屈っぽい社員を2年間預かってくれる大人の託児所
言い得て妙、といったものもあるが、中には単なるオヤジギャグのようなものもある。
ただ、著者も言っているように、「本書の用語説明のほうが、教科書の定義よりも正しい」部分もあり、そこが笑いを誘う。
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